光電子分光測定結果の解析
(共同研究・事例提供:株式会社日産アーク研究部材料解析グループ様)

 試料表面に紫外線やX線を照射すると、光子のエネルギーを得ることによって真空準位より高く励起された電子が放出されます。この電子(光電子)のエネルギーを測定することにより、試料の原子配列や電子状態を調べる実験手法が光電子分光法です。ここでは一酸化スズを題材にして、光電子分光法の測定結果の解釈にAdvance/PHASEによる電子状態解析が大変有用であることをご紹介します。

 図1は一酸化スズの原子配列を表しています。層状構造をしていますが、層間に酸素原子が入り込むことにより、大気中で容易に酸化されることが知られています。その場合の原子配列は、例えば図2のようになります。このように原子配列が変化すると、光電子のエネルギーも変化します。その変化量は「コアレベル・シフト」と呼ばれ、光電子分光法で測定される物理量であり、Advance/PHASEで計算することもできます。そこで、層間に酸素原子を含むいくつかの原子配列についてAdvance/PHASEでコアレベル・シフトを求め、層間酸素濃度依存性を評価しました。結果を図3に赤丸で示します。横軸が層間酸素濃度、縦軸がコアレベル・シフトです。一つの層間酸素濃度に対して、複数の原子配列が考えられますので、その計算結果も示しています。

 青線は計算結果を最小二乗法により二次関数でフィッティングした結果です。この式を検量線として用いることで、コアレベル・シフトの測定結果から、試料の層間酸素濃度を直ちに求めることができます。

 株式会社日産アーク様では、光電子分光法をはじめ、様々な分析サービスを行っています。測定結果の解釈に、Advance/PHASEによる電子状態解析をご活用ください。

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