流体解析ソフトウェア Advance/FrontFlow/red Ver.5.2 の新機能・改良点

  1. 不連続格子機能の強化
  2. AMGソルバーの複数マテリアル対応
  3. 大規模モデルに対する機能強化
  4. その他の機能改良
  5. まとめ

不連続格子機能の強化

不連続格子機能とは、図1のような節点が一致しない格子の接合面で物理量の補間を行い解析する機能です。複雑な形状で通常の格子作成が困難であるとき、またはスライディングメッシュや移動格子など格子が移動する際に必須の機能となっています。今回、AFFrでは以下の機能を追加することで不連続格子機能の大幅な強化を行いました。

  • 不連続格子用の境界条件’interior’を追加
  • 不連続格子用の境界条件’interior’を追加
  • 並列計算における計算法の改良
    • 不連続面でのデータ通信を改良し処理時間を短縮
  • 形状不一致な面での周期境界条件の適用

図2に不連続格子機能の検証モデルを示します。ターボ機械に見られるような円筒領域の一部を切り取った形状となっており、円周方向の両端において周期境界条件が設定されています。これにより周方向境界の片側の流れがもう片方に連続的に接続されています。赤色面が不連続面を表しており、格子点が一致していません。このモデルに対して、軸方向に0.1[m/s]、周方向に0.1[m/s]の流速となるような力を与えます。解析結果を図3に示します。解析結果は物理的にも妥当で、不連続面の影響なく、速度分布、速度ベクトル共にスムーズに流れていることが確認できます。

図4に別の検証モデルを示します。四4柱に対して、不連続格子を作成せずに滑らかに格子を作成した格子形状、そして円柱周りに不連続面を配置した格子形状となっています。四4柱周りの格子幅は両者で同じとなっており、空間精度は同じですが、不連続格子ありの場合には、なしに比べて格子点数が半分以下となっています。このように、不連続格子を用いると、空間精度を保ちながら格子点数の削減が可能です。

この形状に対して左側から空気が流れてきます。解析結果を図5に示します。流れが四角柱に当たることで角柱後流が伸びている様子が確認できます。そして、不連続格子なし、ありで比較しても流れ場に差異は見られない結果となりました。

不連続格子あり・なしに場合における計算の残差を図6に示します。不連続格子を用いても収束性が変わらない結果が得られており、収束性にも影響がないことが確認できます。また、表1に不連続格子あり・なしにおける格子点数と収束までの計算時間、図7に不連続格子なしを1とした場合におけるそれぞれの比率を表しています。この結果から、格子点数を小さくすることで収束までに計算時間も小さく抑えられることが分かります。

AMGソルバーの複数マテリアル対応

Algebraic MultiGrid (AMG)ソルバーとは、大規模な連立一次方程式を高速に解くためにマルチグリッド法の一種です。幾何形状に依存せず、行列Aの係数のみから補間演算子や粗いグリッドを構築する代数的マルチグリッド法となっており、階層が自動生成されるため、任意のメッシュや複雑な領域にも適用可能であるという利点があります。AFFrに実装されていますが、流体領域、固体領域などが複数マテリアルあるときの並列計算など、対応できないケールがありました。今回のバージョンアップにより複数マテリアルの並列計算に対応いたしました。

図9に不連続格子(節点数920万点)におけるAMGソルバーの操作手順を示しています。まず、①細かい格子から粗い格子へ近似を行います。そして、②粗い格子で長波長誤差成分を除去します。最後に③細かい格子へ補間して解ベクトルを更新します。細かい格子から粗い格子にかけて行列次数が小さくなっていることが分かります。

図10に不連続格子(節点数920万点)におけるBiCGSTABとAMGの残差履歴比較、図11に計算時間比較を示しています。これらの結果からわかるように、不連続格子においても良好な収束性と高速化を達成することが確認できました。

まとめ

今回のバージョンアップでは、不連続格子機能の強化、AMGソルバーの強化により、より複雑で大規模な計算も実用的な計算時間で解を得ることができるようになりました。Advance/FrontFlow/red開発チームでは、今後も引き続き大規模解析モデルに対する機能強化を図っていきます。

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