2026年7月17日、アドバンスソフト株式会社 出版事業部は、新しい書籍「原子力発電所の過酷事故の3次元熱流動解析コード BAROC」を発行いたしました。

■ 本書発行の背景:なぜ今、新しい解析技術が必要なのか?

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故では、原子炉建屋内で水素爆発が発生しました。さらに、セシウムなどに代表される放射性物質(核分裂生成物:FP)が、微小な粒子(エアロゾル)となって建屋内に放出される事態となりました。

このような過酷事故(シビアアクシデント)の安全評価を行うためには、「建屋内のどこに水素が溜まりやすく、爆発の危険性が高いか」「放射性物質が建屋内でどのように広がり、どこが高線量のエリアになるか」を正確に予測することが極めて重要です。

しかし、これまでに使用されてきた海外製の著名な解析ソフトウェアには、いくつかの課題がありました。内部プログラムがブラックボックス化されており独自の改良が難しかったり、「集中定数系モデル」という空間を大きなブロックに分ける大まかな手法を採用しているため、狭い隙間からのガスの噴出など複雑な流れを正確に捉えきれなかったりしたのです。また、より精密な3次元解析を行おうとすると、スーパーコンピュータを用いても膨大な計算時間が必要になるという技術的な壁もありました。

■ 最新の解析コード「BAROC(バロック)」とは

これらの課題を根本から克服するために新たに開発されたのが、3次元圧縮性熱流動解析コード「Advance/BAROC」です。本書は、この最先端の解析ソフトウェアの仕組みから、具体的なシミュレーション事例までを網羅した待望の解説書です。

本書の主な見どころと特長 本書では、BAROCの革新的な機能と、それを裏付ける豊富な解析事例を詳しく解説しています。

  • 独自の高速・安定計算アルゴリズム「ECBA法」の開発: 圧力、流速、エネルギーが強く結びついた新しい数値解法を独自開発し、従来の課題であった計算の不安定さを解消、高速で効率的な流体計算を実現しました。
  • 放射性物質(エアロゾル)の複雑な動きを再現: ガスの流れだけでなく、微粒子の重力沈降、壁への付着(沈着)、さらには一度付着した粒子が再び舞い上がる「再浮遊」といった複雑な物理現象をシミュレーションできます。
  • 複雑な建屋構造を計算可能にする工夫: 無数の配管などが入り組んだ複雑な施設全体を計算可能にするため、「ポーラスメディア(多孔質)モデル」を活用し、細かい形状は省略しつつガスに対する「抵抗」を反映させることで、計算負荷を大幅に下げる工夫が施されています。

本書の構成

  • 第1章・第2章: 開発の背景と、多成分系の3次元解析を可能にするソフトウェアの特長・全体像を紹介します。
  • 第3章: 模擬格納容器を用いた試験(ISP-47/ThAIやNSPP)による検証解析結果に加え、福島第一原子力発電所(1号機・2号機)の事故時を想定した水素・エアロゾル挙動の詳細解析など、豊富な事例を報告しています。
  • 第4章: 水蒸気凝縮モデルや、壁構造物熱伝達モデル、凝縮水滴挙動など、物理現象をどのように数式化しているかを解説しています。
  • 第5章・第6章: 行列計算の並列化や、新たに開発したECBA法の具体的な計算手順など、計算を高速化・安定化させる専門的なアルゴリズムを公開しています。

■ このような方におすすめです

BAROCをご利用になる専門家の方はもちろんのこと、原子力発電所の安全技術に関心をお持ちの方や、最新の数値流体力学(CFD)に関心を持つすべての方にとって、有益な知見が得られる一冊となっています。
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