アドバンスシミュレーション Vol.33, 大野 修平, 大西 陽一, 流体機器の設計最適化において広く用いられる応答曲面法やベイズ最適化等の手法は、設計変数空間における目的関数が滑らかであることを暗黙の前提としています。しかしドラッグクライシスに代表される物理的分岐が存在する設計空間では、この前提が根本的に崩れ、設計点間の補間が物理的に意味をなさない領域(不連続面)が生じる可能性があります。既存の最適化手法はこうした破綻を事前に検知する手段を持たず、熟練した解析者が広域スキャン計算の結果を目視で確認し、経験的に対処してきたのが実態です。 本稿はこの問題を出発点とし、物理的分岐の存在を定量的な指標として抽出することを目的とします。汎用流体解析ソフトウェア Advance/FrontFlow/red(AFFr)を用いたWall-Resolved LESにより、ドラッグクライシスを含む円柱まわりの流れ(Re = 2.0×10⁵〜5.5×10⁵)を解析しました。得られた時系列データにインクリメンタルPODを適用し、各Re数における固有値スペクトルを比較した結果、亜臨界域では固有値が急峻に減衰し少数モードによる再構成が可能であるのに対し、超臨界域では多数のモードにエネルギーが分散し低次元化の効率が大きく低下することを示しました。 この固有値スペクトルの形状変化は、設計空間における流動状態の質的遷移を示す診断情報として解釈できます。すなわち、設計最適化の初期探索段階において、各設計点のスペクトル形状を評価することで、応答曲面近似が有効な領域と遷移近傍の不連続領域を事前に分類する指針が得られ、熟練者の目視判断の定量化・自動化に貢献できます。(PDF:784kB)

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