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【開発事例: 防災】 自己組織化による地震発生場の形成


概要

自己組織化の作用を考慮して地震の発生過程をシミュレーションするプログラムを開発し、それを用いて地震が統計法則を満たすことと周期性をもつことの関係を調べました。


シミュレーションのモデル

碁盤の目状に並ぶ格子点に地震の原因となる応力を配置します。応力は初期条件としてランダムに分布させ、歪の蓄積を表現するために一定速度で増加させます。格子点にはランダムに固有の強度をもたせ、応力が強度を超えた点では地震が発生したとみなして応力を 0 にします。そのしわ寄せで隣接する 4 格子点では解放された応力の 1/4 だけ応力の上積みをします。ただし、同じ地震で応力が解放された点は上積みの対象としません。この上積みは応力の解放がまわりに連鎖的に拡大する原因になります。


シミュレーション結果の例

シミュレーションで得られた地震の発生経過の一例を図 1 に示します。これは強度を 2 倍以内の範囲に分布させた場合の計算結果です。この図は応力が強度を超えて地震が起きた時間tに応力が解放された格子点の数 ms を表示します。ms は地震の規模を表しますから、この例では様々な規模の地震がほぼ間断なく起きています。

図1. 地震の発生経過。強度の分布範囲が2倍以内の場合。t は時間、ms は応力が解放された格子点の数で、地震の規模を表す。

図 1. 地震の発生経過。強度の分布範囲が2倍以内の場合。
t は時間、ms は応力が解放された格子点の数で、地震の規模を表す。



この発生経過を整理して、地震の回数 ne を規模別に数えて図 2 に示します。図の縦軸と横軸はともに対数プロットですから、変数はべき乗の関係にあります。

数式

この式は地震の規模と頻度の関係(グーテンベルグ・リヒターの法則)に対応します。

図 2. 貫入面(左端)周辺の弾性変形。10.42hr経過後の水平変位。

図 2. 地震の規模 ms と回数 ne の関係。



図 3 は応力の分布の時間変化です。この図で応力は青が低く、赤味をおびるほど高くなります。最初ランダムに分布した応力は次第に大きな区画に分かれていきます。各々の区画はある時間に地震が起きて応力が解放された範囲です。地震の発生時は応力が 0 になりますが、その後一定速度で増加するので、赤っぽい区画ほど古い地震の痕跡です。


この図にみるように、様々な規模の地震を含むような場が地震活動とともに次第につくられていきます。地震の発生場が自己組織化によって自発的に形成されるということもできます。

図 3. 応力分布の時間変化。応力は青が低く赤みを帯びるほど高くなる。

図 3. 応力分布の時間変化。応力は青が低く赤みを帯びるほど高くなる。



多様な地震発生場の形成

計算条件を変えると全く異なる地震活動の場も生じます。図 4 は強度の分布範囲を 5 %以内に限定した場合に得られる地震の発生経過です。この場合には初期の地震活動の結果として地震は周期的に発生するようになります。

図 4. 強度の分布を5%以内に抑えた場合の地震の発生経過。tは時間、msは応力が解放された格子点の数で、地震の規模を表す。

図 4. 強度の分布を 5 %以内に抑えた場合の地震の発生経過。
t は時間、ms は応力が解放された格子点の数で、地震の規模を表す。


この計算では地震で応力が解放される区画は時間とともに大きくなり、最終的には計算領域全体に広がります。最終状態では応力はすべての点で同じ値をとって時間とともに増加します。応力がどこかの点で強度を超えると、そこから連鎖して応力の解放が領域全体に広がります。このようにして地震を周期的に起こす場が形成されるのです。


まとめ

シミュレーションによって、様々な地震活動の場が地震活動とともに自己組織化の作用でつくられることが分かりました。形成された場の性質に応じて、地震は統計法則を満たすように起きたり周期的に起きたりするのです。



研究開発センター



著者紹介

【井田 喜明(いだ よしあき)】研究顧問 研究開発センター長

東京大学理学部物理学科1965年卒業、同大学院理学系研究科地球物理博士課程修了。マサチューセッツ工科大学、東京大学物性研究所、同海洋研究所、同地震研究所、姫路工業大学(2004年度から兵庫県立大学)などで研究・教育に携わりながら、日本火山学会会長、火山噴火予知連絡会会長なども務める。現在はアドバンスソフト株式会社研究顧問。東京大学名誉教授。兵庫県立大学名誉教授。専門は固体地球物理学。

主な著書に『図説 地球科学』(編著;岩波書店)、『自然災害のシミュレーション入門』(朝倉書店)、『地震予知と噴火予知』(ちくま学芸文庫)、『火山の事典』(編著;朝倉書店)、『地球の教科書』、『人類の未来と地球科学』、『予測の科学はどう変わる』(以上岩波書店)。


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